【ご質問への返答】 はじめての刃物選びについて

中島の独り言
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まいどです。ナカジマです。

先日ある方から頂いた質問と僕からの返答について、きっと他にも知りたい方がいるんじゃないかと思いシェアすることにしました。

 

頂いた質問は下記のような内容でした。

 

『海外には多くのメーカーがありどれを選べばいいのか分からない。半永久的に使えて最高なものってないですか?』

 

そして以下が質問への返答です。(一部加筆・修正してます)

 

『こんばんは。刃物でお悩みとの事ですが、HSS(ハイス)製の研いで使う刃物の場合、研ぎ減っていくのが前提となりますのでいずれ短くなって寿命が来ます。

これに対して最近は先端の刃先チップのみを交換して使用するタイプの刃物も出てきています。

チップさえ交換すれば長さも変わらずずっと使える反面、研がなくていい≒研げないという事でもあるため、削りたい形に対して刃先の形状を調整出来ないという事でもあり実は一長一短なんです。

このため「どうしても研ぐ環境を用意できない」「技術の習得より再現性が高いことが重要」など特殊な事情がない限り、基本的にはHSSの刃物をお勧めしてます。

ではどういう基準で選ぶのか?という事なんですが、イギリスやアメリカのメーカー製の標準的なものであれば性能には大きな差異はありません。私が所有している・使ったことのあるメーカーですとHamlet, Robert Sorby, Henry Taylor, Crown, Ashly Iles, Carter and son, D-way, Thompson, Glaserなどになるでしょうか。

初期の刃物選びにおいて重要なのは、どのメーカーでどんな材質かというよりも「作りたいものに対して適切なサイズと形状の刃物かどうか」という事です。

例えば30cmのサラダボウルを荒削りするのに1/4インチのボウルガウジは細すぎるでしょうし、指先ほどの小さなコマを作るのに1-1/2インチのラフィングガウジは大きすぎる、というような事です。

サイズと形状(研ぎも含めて)が適切でありさえすれば、シビアなプロの仕事でない限り上記メーカー間で大きな違いが出ることはほとんどないと思います。
※一部例外として非常に性能の高い鋼材を使用した高級ラインもありますが、M2~M42素材の一般グレードとしてご説明しています。

もしこの場合の選択肢について強いて挙げるならば、刃そのものよりもハンドルの構造でしょうか。伝統的なウッドハンドルでも十分に用は成しますが、刃物の持ち運びが多い場合は着脱式のものが便利だったりしますし、工房内での収納場所が限られる場合もメリットが出やすいです。いずれの場合でも必要十分な長さが前提条件です。また振動を減衰する構造になっているハンドルは、厳しい条件での加工時にかなり使用感が良いこともあります。

ちなみに当スタジオで製作しているオリジナルの刃物とハンドルは私の好みをベースに調整したもので、かなり高めの硬度と鋭い研ぎ上がり、着脱がとにかく容易というところにフォーカスしてます。硬いということは長切れする反面研ぎ易さはやや犠牲になっていますし、ハンドルもコレット式やイモネジ式に比べると刃物の固定力ではやや劣ります。

このため、「堅木の乾燥材が仕事として多いので少しでも長切れして、頻繁に研ぐのにハンドルから簡単に取り外しできるものが必要」というようなケースにはメリットが出やすいですが、針葉樹がメインであったりするとそれほど性能の違いは体感できないかもしれません。

ご質問にお答えできているかどうか分かりませんが、以上をご参考頂ければ幸いです。』

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いかがでしたでしょうか。

 

余談ですが、道具であっても意匠を褒めて頂けるのは素直にとても嬉しいです。

また選択時において性能はもちろん大事な要素でありますが、「モチベーションが上がる道具である」というのが実は一番核心に迫っているのかも知れません。

もし当スタジオの道具をその選択肢に加えて頂けるのであれば幸甚です。

それではまた次回。

 

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