ワークを傷つけないのに固定は自由自在。「真空チャッキング」を徹底解説!

スタッフより
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どうも!スタジオスタッフの渡辺です!

今回は

ワーク(材料)に傷をつけずに自由度の高い固定が出来る「真空チャッキング」についてご紹介します!

 

目次

真空チャッキングとは・・・・・・

 

ところで皆さんは「真空チャッキング」という言葉を聞いたことはありますか?全然知らないという方も、既にご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

真空チャッキングとは木工旋盤でワークをチャッキング(固定)する際四爪チャックなどで掴むのではなく、真空ポンプなど用いてワークを真空で吸着させてチャッキングする方法のことです!

 

例えば、木工旋盤で器などを制作する際に、最後の工程で掴みしろを削り取りたいとします。

一般的な方法だとこのようなコールジョーを使って

ワークをチャッキングして削る方法があります。

ただし、この方法だと器の大きさ・形状に合わせてコールジョーのツメをいちいち合わせてセッティングしてあげる必要があります。

でもこれ毎回調整するのはちょっと面倒くさいですよね・・・・・・

 

しかし!

真空チャッキングなら

はいっ!

ワークを真空で吸着させるのでピタッとワンタッチで固定することができちゃうんです!手間もかからず楽にチャッキングすることができますね!

 

また、真空チャッキングのメリットは

「ナチュラルエッジの器などコールジョーではチャッキングが難しい形状のものも簡単にチャッキングすることができる」

ということなんです!

 

真空チャッキングで作業効率が上がるのはもちろんのこと作品の表現の幅も広げることができます!!

 

真空チャッキングに必要なもの

そんな画期的な真空チャッキングをするために必要なものがこちら!

【 真空チャッキングシステム 】

スタジオでも好評発売中の

「真空チャッキングシステム」です!

 

内容物は・・・

  1. 2ステージ式 真空ポンプ+オイルミストフィルター
  2. 真空接続キット
  3. ロータリーアダプタ
  4. ホース

の4点です。

 

【 2ステージ式 真空ポンプ+オイルミストフィルター 】

【 真空接続キット 】

【 ロータリアダプタ 】

WOODFAST M320用

or

Powermatic3520B, 3520C, American Beauty25用

3520用ロータリアダプタ

or

ACUTUS 卓上木工旋盤 1420VDA用

 

真空チャッキングのセット方法

上記のセットなら初めての方でも簡単にセッティング可能!

まず、こちらのチューブフィッティング

真空ポンプにモンキーレンチなどでしっかりと取り付けます。

そして、チューブを奥までしっかりと挿し込みます。

チューブの反対側の先は下画像の真空接続キットの左側に挿し込みます。

続いて、ロータリアダプタにもチューブフィッティングを取り付けます。

そして、下画像のようにロータリアダプタ真空接続キットをホースで繋ぎます。

あとは、ロータリアダプタを木工旋盤の主軸側に挿し込めばあっという間にセッティング完了です!(ロータリアダプタが主軸に入りづらい場合は、シリコンスプレーなど吹いてください。)

すべてセッティングすると

【真空ポンプ→真空接続キット→ロータリアダプタ→木工旋盤

っという感じになります!

 

真空カップを木材で自作する

あと、必要なものは真空カップくらいです。

真空カップは木工旋盤の主軸に取り付けワークを吸着させるための道具です。
アルミ製のものなど市販もされていますがフェイスプレートと木材があれば簡単に自作することができるんです。

さらに自作でのメリットはワークの形状に合わせて簡単に作り変えることができるということなんです!

では、実際に作り方をご紹介します!

 

用意するもの

  1. フェイスプレート
  2. ビス
  3. 木材(散孔材が好ましい)
  4. コーキング剤
  5. シリコンシート

 

ここで用意していただく木材は真空カップにしたときになるべく気密性を高めるために目の詰まった散孔材が良いです。
散孔材とは、木口から見た時に道管が無差別に散在して分布している材のことです。一般的に木目ははっきりとしていませんが均質であることが特徴です。比較的身近で代表的なものにはサクラ(チェリー)・ブナ(ビーチ)・カエデ(メープル)などがあります。

 

①木材の製材(バンドソー)

まず木材を必要なサイズに製材します。

バンドソーなどで大まかにカットします。今回、作る真空カップの材は最終的に70×70×100mmの大きさにしました。
このサイズはご自身が作りたいワークの大きさ・形状に合わせて調整してみてください!

カップの長さが短いと深さのある器などに密着させることができません。また、必要以上に長いと吸着させて切削する時の安定が悪くなってしまいます。

 

②木材の製材(のこ盤・鉋)

さて、大まかに製材できればフェイスプレートに木材を固定するのですがフェイスプレートと木材が接する面は出来るだけ綺麗な平面がいいです。

大きな凹凸などがあるとフェイスプレートと木材との間に隙間ができてしまい気密性が下がってしまいます

なので!

フェイスプレートに取り付ける面は

のこ盤・鉋など平面精度がでるもので製材します。

 

③フェイスプレートと木材をビスで固定する

木材の製材が終わったらフェイスプレートに取り付けます。

なるべく隙間の無いように

ビスでしっかりと取り付けて下さい!

 

④コーキング剤で隙間を埋める

フェイスプレートと木材をビスで固定できたら隙間をコーキング剤などで埋めていきます。

フェイスプレートと木材との隙間をこのように

埋めていきます!

ちなみに「コーキング」とは「隙間を埋める」という意味で私たちの身近なものでいうと浴室のタイル、シンク、浴槽、壁との隙間などに埋められている白いボンド状のようなものがコーキング剤です。

コーキングの代わりに接着剤でもいいんですが、あまり強力に接着してしまうと後で外したくなった時がちょっと大変かもしれません。

 

⑤木工旋盤に取り付ける

さて、次は真空カップを木工旋盤に取り付けます。

⑥円柱に削る

そして、ざっくりと円柱にラフィングしちゃいましょう。

⑦貫通穴をあける

円柱に削れたら・・・・・・

ドリルチャックにドリルを咥え貫通穴をあけます。

貫通穴の大きさは

主軸にあいている貫通穴と同じくらいの径であいていれば十分です。

⑧ワークの形状に合わせて調整する

貫通穴があいたらワークとの接地面を少し削ります。

このように少し窪ませて

フチはワークの形状に合うように調整しながら削ります。
この調整をすることでよりワークにダメージを与えず、固定力も増すことになります。ここがカップ自作のミソといえます。

⑨シリコンシートを取り付ける

あとは、真ん中に穴をあけたパッキンを表面にくっつければ真空カップの完成です!
パッキンにはクロロプレンゴムスポンジのシートなどが良く利用されていますが、スタジオでは硬度40の無垢シリコンゴムシート2mm厚を使っています。

⑩実際に使ってみる!

では、実際に使ってみましょう!ワークをテールストックで真っ直ぐに真空カップに押し当て固定します。

続いて、主軸側から真空ポンプ、真空接続キットに繋いだロータリアダプタを差し込みます。

<ロータリアダプタが主軸に入りづらい場合は>

入りにくい場合はシリコンスプレーなどを軽く吹いてあげるとスムーズに入ります。

セットが完了したら真空ポンプの電源を入れます。一つの目安として、最低でも真空ゲージの値が0.08Mpaより低くなるようにしてください!

ただし、小さいワークなど吸着面積が小さいものは0.08Mpaでも十分な固定力にならない場合もあります。ここについてはこの後もう少し解説します。

実際に刃物で切削する前に手でワークがしっかりと固定されているか確認してみてください。

また、なるべくテールストックを併用してギリギリまで片持ちにしない、重切削は極力しないことがポイントです!

 

<到達真空度について>

真空ゲージに表示される真空度はあくまで固定力の目安です。真空チャッキングでの吸着力は圧力と吸着面積の積に比例します。

圧力とはここでいう真空ゲージの到達真空度の値のことです。

また、吸着面積は真空カップとワークとが接触している面積のことです。

 

  • 圧力が低くても、吸着面積が広いと吸着力は高くなります。
  • 逆に、圧力が高くても、吸着面積が狭いと吸着力は低くなります。

 

きちんと真空チャッキングができていればこのようにワークを吸着させて削ることができます!

 

<真空度が高くならない場合の対処法>

真空ポンプを作動させても真空度がなかなか上がらず0.08Mpaに達しない場合は、真空カップもしくはワークから空気が漏れている可能性があります。

真空カップから空気が漏れている可能性が疑われる場合は、カップにラッカー塗装など塗膜ができるタイプの塗装をしてみてください。
道管が塗料で埋まることにより真空度が高まるはずです。

一方ワークの樹種や密度、木取りの方向によっても空気が漏れてなかなか真空度が上がらない場合があります。

そんな時は真空ポンプを作動させチャッキングしたまま軽くサンディングしてみてください。木の粉塵が道管に詰まり真空度が高まる場合があります。また、ワークの片面だけを先に塗装仕上げしてしまうというのも手です。

 

きちんと真空チャッキングができれば、あとは削るだけ。

器の底も綺麗に仕上げることができました!!

真空チャッキングを使えばワークに傷も入らず、あっというまに完成です!!

 

【まとめ】真空チャッキングで簡単&スピーディーに!

いかがでしたか?

真空チャッキングを使えば器の底の仕上げなども簡単スピーディーにできちゃいます!!

 

真空カップも簡単に自作できるのでワークの形状に応じて臨機応変にカップ形状を変えることができれば、より幅広い作品作りにチャレンジできますよ!!

 

ぜひ、みなさんも真空チャッキングに挑戦してみて下さい!!

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